次世代抗体モダリティとして注目されるシングルドメイン抗体
Introduction
抗体医薬品は、がん、自己免疫疾患、感染症など幅広い疾患領域で重要な治療モダリティとして利用されています。現在上市されている多くの抗体医薬品はIgG抗体を基盤としていますが、近年ではより小型で分子設計の自由度が高いシングルドメイン抗体(VHH)が、新たな創薬モダリティとして注目されています。
VHH(Variable domain of Heavy-chain-only antibody)は、ラクダ科動物が有する重鎖抗体(Heavy-chain-only antibody)の可変領域から構成される約15 kDaの抗体断片です。一般的なIgG抗体(約150 kDa)と比較して約10分の1の大きさでありながら、高い抗原結合能と優れた物理化学的安定性を維持しています。
この特徴から、VHHは従来の抗体では困難であった分子設計や新規モダリティへの応用を可能にし、次世代抗体創薬を支えるプラットフォームとして期待されています。
VHHの構造的特徴
一般的なIgG抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖から構成される複雑な四量体構造を有しています。一方、VHHは重鎖抗体の可変領域のみからなる単一ドメイン構造であり、軽鎖を必要としません。このシンプルな構造により、VHHは独立した機能性分子として安定に存在できるだけでなく、大腸菌や酵母などの微生物を用いた組換え発現にも適しています。
Figure 1: IgGとVHHの構造比較図
VHHが注目される理由
1. 小型で高い組織浸透性
VHHはIgGの約10分の1という小さな分子サイズを有しており、立体構造が複雑な標的や、狭いエピトープへのアクセスが可能です。
2. 優れた物理化学的安定性
熱やpH変化に対する耐性が高く、優れた熱安定性や可溶性を示すことが知られています。
3. 高い分子設計自由度
他のタンパク質や抗体との融合が容易であり、多特異性抗体、CAR-T、ADC、DDSなどへ展開できます。
4. 開発・製造への適性
微生物発現系への適応性が高く、リード最適化や製造スケールアップにも適しています。
創薬モダリティとしてのVHH
近年、VHHは単独の治療分子としてだけでなく、多様な創薬モダリティを構成する機能性ドメインとして利用されています。例えば、多特異性抗体、CAR-T細胞療法、ADCやDDSでは標的指向性を付与するリガンドとして活用されています。
Figure 2: VHHの利用応用例
EMEのアプローチ
EMEでは、VHHの優れた特性を最大限に活用するため、独自に設計したヒト化VHH人工ライブラリ「PharmaLogical® Library」を構築しています。本ライブラリは、高い多様性と開発適性を両立したVHHの取得を目的としています。さらに、独自のcDNAディスプレイ技術と組み合わせることで、大規模ライブラリから効率的にVHHを選抜し、リード分子の取得を支援しています。
Summary
VHHは、小型で高い安定性と分子設計自由度を兼ね備えた次世代の抗体モダリティです。EMEでは、ヒト化VHH人工ライブラリ「PharmaLogical® Library」とcDNAディスプレイ技術を基盤とした独自のプラットフォームを構築し、高品質なVHHリード分子の迅速な取得を実現しています。
References
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