PharmaLogical® Library

該当なし
EME Technical Notes TN-02
PharmaLogical® Library

創薬に適したVHHを取得するために設計されたヒト化人工ライブラリ

Introduction

抗体創薬において、取得される抗体の品質はライブラリの設計によって大きく左右されます。ライブラリの多様性が十分でなければ標的に結合する抗体を取得できる可能性は低くなり、逆に多様性のみを追求すると、発現性や安定性に課題を持つ分子が多く含まれることがあります。
EMEが開発したPharmaLogical® Libraryは、ヒト化VHHを基盤として、構造情報、配列多様性、物理化学的特性を考慮して設計した人工ライブラリです。単に多くの配列を集めるのではなく、「創薬に利用できるVHH」を効率的に取得することを目的として設計されています。

ライブラリ設計の考え方

従来のVHH取得では、アルパカなどのラクダ科動物を免疫し、得られた抗体ライブラリから標的分子に結合するVHHを選抜する方法が広く利用されています。この方法は高い実績を有する一方で、免疫期間を要することや、取得したVHHのヒト化が必要となる場合があるなど、医薬品開発においていくつかの課題があります。
PharmaLogical® Libraryは、こうした課題を解決するため、ヒト化フレームワークを基盤とした完全人工ライブラリとして設計されました。免疫に依存しないため、新規標的や免疫原性の低い抗原にも迅速に対応できることが特徴です。

PharmaLogical® Libraryの特徴

PharmaLogical® LibraryのコンセプトFigure 1: PharmaLogical® Libraryのコンセプト

1. ヒト化フレームワークを採用

ライブラリ全体はヒト抗体との相同性を考慮したVHHフレームワークを基盤として設計されています。これにより、取得されるVHHは医薬品開発に適した配列を有し、リード取得後のエンジニアリング負荷を低減できる可能性があります。

2. 構造情報に基づくCDRデザイン

抗原認識に重要なCDR領域は、既知のVHH構造や天然抗体レパートリーの解析結果を参考に設計されています。特にCDR3については長さやアミノ酸組成を最適化し、多様な抗原表面や立体構造に対応できるよう設計されています。また、EMEでは独自の構造分類(Upright、Roll、Half-Roll)を導入し、多様な結合様式を実現するライブラリ構成を採用しています。

3. 高い分子多様性

PharmaLogical® Libraryは約1013~1014規模の理論多様性を有しています。この大規模ライブラリにより、平坦なタンパク質表面だけでなく、酵素活性部位や受容体ポケットなど複雑なエピトープに対しても、多様な結合様式を持つVHHを探索できます。

4. Developabilityを考慮した設計

ライブラリ設計では結合性だけでなく、医薬品候補として重要となる物性にも配慮しています。

例えば、

  • 発現性
  • 熱安定性
  • 可溶性
  • 凝集性
  • 配列均一性

など、開発初期に問題となりやすい要因を考慮してライブラリを設計しています。これにより、取得後のリード最適化に要する工数の低減を目指しています。

cDNAディスプレイとの組み合わせ

PharmaLogical® Libraryの性能を最大限に引き出すため、EMEでは独自のcDNAディスプレイ技術を採用しています。大規模ライブラリと無細胞ディスプレイ技術を組み合わせることで、高い多様性を維持したまま効率的なスクリーニングを実施し、標的分子に対するVHHを短期間で取得することが可能です。さらに、取得後は配列解析、結合親和性評価(SPR/BLI)、熱安定性(Tm)、凝集性(Tagg)などを評価し、創薬研究に適したリード分子の選抜を行っています。

EME Platform

PharmaLogical® LibraryはEMEの抗体取得プラットフォームの中核を担う技術です。ヒト化ライブラリ設計、cDNAディスプレイ、Developability Assessmentを組み合わせることで、抗原への結合性だけでなく、開発適性を考慮したVHH取得を支援しています。このプラットフォームは、高速抗体取得サービス「The Month」の基盤技術として、多様な創薬ターゲットに対するVHH取得へ活用されています。

Summary

PharmaLogical® Libraryは、ヒト化フレームワーク、構造ベースのCDR設計、高い分子多様性、そして開発適性を考慮した設計思想を組み合わせた人工VHHライブラリです。
EMEでは、このライブラリとcDNAディスプレイ技術を組み合わせることで、多様な創薬ターゲットに対する高品質なVHHリード分子の取得を支援しています。

References

  1. Muyldermans S. Annu Rev Biochem. 2013;82:775797.
  2. Bannas P, Hambach J, Koch-Nolte F. Front Immunol. 2017;8:1603.
  3. Jovcevska I, Muyldermans S. BioDrugs. 2020;34:11-26.
  4. Murakami et al. Antibodies. 2022; 11:1
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