創薬初期から開発適性を見据えたVHH評価
Introduction
抗体創薬では、標的分子に結合する抗体を取得することが最初の重要なステップです。しかし、高い結合親和性を示す抗体であっても、そのすべてが医薬品候補として適しているわけではありません。創薬研究が進むにつれて、発現性、安定性、凝集性、製剤適性など、さまざまな課題が明らかになることがあります。これらの課題は開発後期になるほど解決が難しくなるため、近年では創薬初期から開発適性(Developability)を評価することの重要性が広く認識されています。
Developability Assessmentは、抗体の結合性だけでなく、医薬品候補として求められる物理化学的特性や製造適性を総合的に評価するアプローチです。
開発可能性評価(Developability Assessment)とは
開発可能性評価(Developability Assessment)とは、候補分子が研究段階から製造・製剤化・臨床開発へ進むうえで必要となる特性を総合的に評価する考え方です。例えば、高い結合親和性を示す抗体であっても、
- 発現量が低い
- 熱安定性が低い
- 凝集しやすい
- 保存中に品質が変化しやすい
といった特性を有する場合には、その後の開発工程で課題となる可能性があります。そのため、近年の抗体創薬では、リード探索の段階からこれらの特性を評価し、総合的な観点から候補分子を選抜することが一般的になっています。
EMEの開発可能性評価
EMEでは、取得したVHHについて、結合性だけでなく、複数の物性評価を組み合わせた開発可能性評価を実施しています。結合親和性については、SPRやBLIを用いて速度論解析および平衡解離定数(KD)を評価します。さらに、示差走査蛍光法などを用いて熱安定性(Tm)を測定し、分子の構造安定性を確認します。また、光散乱測定などにより凝集開始温度(Tagg)を評価し、保存性や製剤化への影響を検討します。加えて、発現性や精製性などの実験データもあわせて確認し、候補分子を総合的に評価します。このように、単一の評価項目ではなく複数の特性を統合的に判断することで、創薬研究に適したリード候補の選抜を支援しています。
Figure 1: 抗体の特性評価
創薬初期で評価する意義
開発可能性評価は、「良い抗体を見つける」ための評価ではなく、「その後の研究開発を円滑に進められる候補分子を選ぶ」ための評価です。創薬初期の段階で物性上の課題を把握することで、候補分子の選択やエンジニアリング方針を早期に検討でき、後工程での開発リスクを低減することが期待されます。そのため、開発可能性評価は、現在では多くの抗体創薬プロジェクトにおいて重要な評価項目の一つとなっています。
EMEのアプローチ
EMEでは、PharmaLogical® Library、cDNAディスプレイ技術、そしてThe Month Platformを組み合わせることで、VHHの取得から初期特性評価までを一貫して実施しています。開発可能性評価は、このワークフローの最終工程として位置付けられており、取得した候補分子について、結合性だけでなく開発適性を考慮した総合評価を行います。これにより、研究者が次の創薬ステージへ進めるための判断材料を提供し、効率的なリード最適化を支援しています。
Summary
開発可能性評価(Developability Assessment)は、結合親和性だけでは評価できない物理化学的特性や製造適性を創薬初期から評価するための重要なアプローチです。
EMEでは、VHH取得プラットフォームと組み合わせた包括的な評価を実施することで、研究者が開発適性を考慮したリード候補を効率的に選抜できる環境を提供しています。
References
- Smith GP. Science. 1985.
- Roberts RW, Szostak JW. PNAS. 1997.
- Muyldermans S. Annu Rev Biochem. 2013.
- EME Technical Notes TN-02, TN-03