大規模ライブラリから高品質なVHHを取得する無細胞ディスプレイ技術
Introduction
抗体創薬では、多様な抗体ライブラリの中から標的分子に結合するリード候補を効率的に取得することが重要です。そのために利用される技術がディスプレイ技術です。ディスプレイ技術では、タンパク質(Phenotype)と、それをコードする遺伝子(Genotype)を対応付けた状態でライブラリを構築し、標的分子との結合選択を繰り返すことで、目的の抗体を取得します。
現在では、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイなど、さまざまな技術が創薬研究に利用されています。EMEでは、大規模ライブラリの利用と安定したスクリーニングを両立するため、cDNAディスプレイ技術を採用しています。
ディスプレイ技術の基本原理
ディスプレイ技術では、タンパク質とその遺伝子情報を物理的に結び付けた状態でライブラリを構築します。標的分子に結合したタンパク質を回収すると、その分子をコードするDNA配列も同時に取得できるため、結合分子を効率よく同定できます。このGenotype–Phenotype linkageは、すべてのディスプレイ技術に共通する基本概念であり、大規模ライブラリから目的分子を探索するための重要な基盤となっています。
cDNAディスプレイの特徴
RNAではなくcDNAを利用するため、RNA分解酵素(RNase)の影響を受けにくく、安定したライブラリの取り扱いが可能です。また、細胞への形質転換を必要としないことから、生細胞を利用するディスプレイ技術では制限されるライブラリサイズを大きく拡張できることも特徴です。
Figure 1: cDNAディスプレイの模式図他のディスプレイ技術との比較
各ディスプレイ技術には、それぞれ特徴があります。ファージディスプレイや酵母ディスプレイは、生細胞を利用するため豊富な実績がありますが、ライブラリサイズは細胞への導入効率に影響されます。一方、リボソームディスプレイやmRNAディスプレイは無細胞系であるため、より大規模なライブラリを扱うことができますが、RNAの安定性に配慮した実験操作が求められます。cDNAディスプレイは、無細胞系による大規模ライブラリの利用と、cDNAによる安定性を組み合わせた技術であり、多様な創薬ターゲットに対するスクリーニングに適しています。
Figure 2: ディスプレイ技術の比較
EME Platform
EMEでは、独自に設計したPharmaLogical® LibraryとcDNAディスプレイ技術を組み合わせることで、約1013~1014規模のライブラリを対象としたVHHスクリーニングを実施しています。
取得したVHHは配列解析に加え、
- 結合親和性(SPR・BLI)
- 熱安定性(Tm)
- 凝集性(Tagg)
- 発現性
- Developability
などを総合的に評価し、創薬研究に利用可能なリード候補を選抜しています。この一連のプラットフォームは、高速VHH取得サービス**「The Month」**の中核技術として活用されています。
Summary
cDNAディスプレイは、タンパク質とその遺伝子情報を安定的に連結し、大規模ライブラリから目的分子を効率よく取得するための無細胞ディスプレイ技術です。
EMEでは、PharmaLogical® Libraryと組み合わせることで、高い多様性を維持したまま、創薬に適したVHHの迅速な取得を実現しています。
References
- Nemoto N, et al. FEBS Letters. 1997. (cDNA Displayの原理)
- Roberts RW, Szostak JW. PNAS. 1997. (mRNA Display)
- Smith GP. Science. 1985. (Phage Display)
- Gera N, et al. Methods. 2013. (Display Technologies Review)