2023.10.18

研究進捗

ハイスループットスクリーニング”The Month”を用いたVHH抗体の取得Overview

この記事のKeywords:
VHH抗体/スクリーニング/The Month/cDNA Display/パニング/ハイスループットスクリーニング/抗体ライブラリ/ヒットクローン

EMEのVHH抗体を用いた創薬アプローチ背景:

EMEでは、様々な疾患をターゲットとした創薬へのアプローチを製薬会社様との共同研究として、または社内パイプラインとして取り組んでいます。特に社内パイプラインとしてはアンメットメディカルニーズの解消を目指して、現在は固形がん、がん・免疫、感染症、呼吸器疾患、神経疾患、生活習慣病の計9つのパイプラインを進めております。これらのパイプラインは、VHH抗体という比較的新しいモダリティを使った創薬をすることでbreakthroughを目指しております。VHH抗体は従来の抗体が認識できないエピトープを認識することが可能であり、また、分子エンジニアリングが容易なため、パラトープ創薬(異なるエピトープを認識するVHH抗体の組み合わせ)などの開発も可能です。

“The Month”の特徴:

当社のVHH抗体”The Month”というハイスループットスクリーニングプラットフォームを用いて取得されます。この”The Month”の最大の特徴はわずか30営業日で高品質なVHHクローンの取得が可能という点です。

この”The Month”は当社が独自に開発した人工ヒト化VHH抗体ライブラリのPharmaLogical® Libraryと当社のもつcDNA display技術を応用したハイスループットスクリーニングを組み合わせたプラットフォームであり、2021年の実装以降、様々な抗原へのスクリーニングを実施 し、高品質でユニークな配列をもつVHH抗体の取得に成功しています。

The Monthフロー

 

当社の”The Month”のフローではcDNA displayを用いたスクリーニングを数ラウンド行った後に取得されてきたVHH抗体を大腸菌でクローニングします。その後、通常192個(96wellプレート二枚分)のコロニーをランダムにピッキングし、コリネバクテリウムで分泌させ、その上清を使って一次結合アッセイをします。ここで結合が確認されたヒットVHH抗体の配列を解析し、重複する配列をカウントから除外し、ユニークな配列のみを選びます。その後これらの配列をもつVHH抗体を合成・精製し、KD値・熱安定性(Tm値、Tagg値)を測定し、最終ヒットクローンまで絞り込みます。当社の過去のスクリーニング実績では、最大KD値10-11(測定可能値)のVHH抗体が取得されています。

実施例(特定の固形がんターゲット抗原認識・阻害活性を示すVHH抗体のスクリーニング):

(1)取得クローン数:

この実施例では、コロニーピッキングでランダムに選択された192クローン中52クローンが結合能を示し、そのうち重複する配列を除き38クローンが候補配列としてあがってきました。最大KD値10-11程度のVHH抗体が取得されました。また、取得されたVHH抗体の多くがTm値が60℃以上という、熱安定性の 高いVHH抗体クローンであることが確認されました。そしてKD値・熱安定性の測定で指定したthresholdに達した最終クローンは23クローンでした。

Example data #1:スクリーニング例/取得クローン数

 

Example Data#2:スクリーニング例/VHHヒットクローンのTm値・KD値散布図グラフ(斜線範囲はヒットVHH抗体選択時のthreshold)

 

(2)ヒットVHH抗体の細胞上抗原への結合確認・機能性アッセイ

最終ヒットVHH抗体23個の機能性をFCM解析で評価しました。このアッセイでは取得されてきたヒットVHH抗体が生細胞上の標的分子に結合することが確認されました。

 

また、取得されたクローンにより、ターゲット下流リン酸化シグナルが阻害されることをWestern blottingで確認しました。

Example Data#4取得VHH抗体 のリン酸化阻害アッセイ

今後の展望:

当社は引き続き”The Month”の技術を用いて自社および製薬企業様などとのコラボレーションを一層推進してまいります。”The Month”プラットフォームでは競合アッセイによる異なるエピトープを認識するVHH抗体の取得など、ニーズに合わせたVHH抗体取得が可能です。詳しくは当社のお問い合わせフォームよりお問い合わせいただけます。

*1 PharmaLogical® Library:従来抗体では認識不可能な抗原結合部位を認識することができるVHH抗体の構造的特性を最大限に反映させ設計された独自のヒト化VHH人工ライブラリー。

*2 cDNA display技術:遺伝子型/表現型対応付けによる目的タンパクの取得を試験管内で行うことができる技術。従来のファージディスプレイを大幅に超える1013-14(10兆~100兆)種類の分子を一度にスクリーニングすることが可能。

*3 VHH抗体:ラクダ科動物の持つH鎖のみで構成される抗体(一本鎖重鎖抗体)の可変領域(ドメイン)のことで、Variable domain of heavy chain of heavy chain antibodyという。通常の抗体と比較して安定性や修飾性に優れている。

 

PharmaLogical® Libraryのポイント】

・VHH抗体の結晶構造解析データを基にしたデザイン

・抗体フレームワーク部分(FR)に関して既に臨床応用されているヒトFR配列とVHH抗体の結晶構造解析データの結果得られた構造特性を基にデザインしたヒト化VHH抗体ライブラリーです。抗原認識部位を形成する3つのCDR(相補性決定領域;Complementarity Determining Region)はアルパカ由来VHH抗体から得られた構造特性の情報を基に設計しており、特に抗原結合に最も寄与することが知られているCDR3を大きくランダム化することで、さらなる多様性を発揮します。

・製剤化における不均一性を引き起こすアミノ酸の出現頻度に抑制をかける設計

・修飾を受けやすいアミノ酸や、システイン、プロリン残基のような大きな構造変化を引き起こす可能性のあるアミノ酸は製剤化プロセスにおける不均一性を引き起こす原因となります。これらのアミノ酸の出現頻度を抑制するCDRの設計を行うことで、創薬プロセスで生じる課題の最小化が期待できます。

・多様なライブラリーサイズ: 1013-14(10兆~100兆)という多様なライブラリーサイズを持ち、EMEのコア技術であるcDNA display技術を基盤としたスクリーニング系により、ライブラリーの多様性を維持したまま革新的なVHH抗体 スクリーニングを展開することが可能です。

 

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