2023.01.30

プレスリリース

【学術論文公開】天然型FGF2よりも高い熱安定性・構造安定性を有するホモ二価体VHHのFGFR1アゴニスト分子開発に関する研究成果がJournal of Biological Chemistryより公開されました

~ 天然型FGF2よりも高い熱安定性・構造安定性を有するホモ二価体VHHのFGFR1アゴニスト分子を開発、JBCで公開 -VHHを基盤とした再生医療分野でのサプリメント応用を目指す- ~

株式会社 Epsilon Molecular Engineering(本社:埼玉県さいたま市、代表取締役:根本 直人、以下当社)は、積水化学工業株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:加藤敬太)と共同開発したラクダ科動物由来VHH(*1)で構成される生理活性タンパク質ヒトFibroblast Growth Factor-2 (線維芽細胞増殖因子2、以下「FGF2」(*2)という)の代替物に関する学術論文が、2022 年 12 月 16 日(現地時間)に Journal of Biological Chemistry電子版に掲載されましたことをお知らせいたします(https://www.jbc.org/article/S0021-9258(22)01247-9/fulltext#secsectitle0160)。 Journal of Biological Chemistry誌は、生化学・分子生物学分野における国際的に査読付きオープンアクセスジャーナルです。

VHHはラクダ科動物が生産する重鎖抗体の可変領域部分を利用したシングルドメイン抗体で、優れた物性(抗原結合特異性や親和性、熱安定性等)を有していることから次世代抗体として期待されています。当社と積水化学とでは、FGF2の代替となるVHHを共同開発して参りました。当社は、独自コア技術のcDNA display技術(*3)を展開することによってFGF受容体1(以下「FGFR1」という)に特異的に結合するVHH を効率的に取得し、そのVHHに対してタンパク質工学的な最適化にてホモ二価体VHHを作製いたしました。また、積水化学ではホモ二価体VHHについて線維芽細胞に対する細胞増殖試験等の生物活性評価を実施しました。その結果、ホモ二価体VHHは天然のFGF2と同程度の比活性を有しており、FGF2代替物として機能いたしました。このFGF2代替物は、新規FGFR1アゴニストVHHとなります。

現在、再生医療応用を目的とした試験管内における細胞増殖工程において、FGF2が一般的に利用されていますが、FGF2の熱安定性の低さなどの点から、一連の工程で要する天然型FGF2リコンビナントタンパク質が多量となってしまうため、その利用によるコスト面での問題点が挙げられています。今回開発されたこのFGF2代替物は、天然型FGF2リコンビナントタンパク質より10℃以上高い熱安定性を有していることがわかりました。また大腸菌や酵母等の微生物による産生効率が高く、再生医療研究での細胞培養培地添加剤の低コスト化が実現可能となります。

 

論文タイトル:

A novel agonist with homobivalent single domain antibodies that bind the FGF receptor-1 domain III functions as a FGF2 ligand

著者:

Ryo Yonehara, Shigefumi Kumachi, Kenji Kashiwagi, Kanako Wakabayashi-Nakao, Maiko Motohashi, Taihei Murakami, Teruhiko Yanagisawa, Hidenao Arai, Akikazu Murakami, Yukio Ueno, Naoto Nemoto, Masayuki Tsuchiya

Journal of Biological Chemistry, (2023) Volume 299, Issue 2, 102804

DOI: https://doi.org/10.1016/j.jbc.2022.102804

 

(*1)VHH:ラクダ科動物(リャマ・アルパカ)の持つ重鎖のみで構成される抗体(重鎖抗体)の可変領域のことをVariable domain of heavy chain of heavy chain antibodyあるいはシングルドメイン抗体という。通常の抗体と比較して安定性や修飾性に優れている。

(*2)FGF2:線維芽細胞増殖因子2。塩基性線維芽細胞増殖因子;bFGFともいう。FGF受容体に結合することで細胞内シグナルのON/OFFを調整する等の多面的な作用を示す成長因子。再生医療分野の応用では、ヒト胚性幹細胞培地における重要な構成要素であり、FGF2は細胞を未分化状態に維持するために必要である。

(*3)cDNA display技術:遺伝子型/表現型対応付けによる目的タンパクの取得を試験管内で行うことができる技術。1013-14(10兆~100兆)種類の分子を一度にスクリーニングすることが可能。

 

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【株式会社Epsilon Molecular Engineeringについて】

株式会社Epsilon Molecular Engineering (EME)は、2016 年から進化分子工学を基盤技術として革新的なモダリティ医薬品開発を行っている埼玉大学認定ベンチャーです。独自のスクリーニング技術や分子設計手法を強みに、医薬品開発だけでなく診断薬や再生医療用試薬の共同研究開発を行っています。「バイオ分子で未来を創る」を企業ミッションとして、幅広く社会および人々の生活に貢献していくことを目指しています。

ホームページ: https://www.epsilon-mol.co.jp/

※EMEのロゴは株式会社Epsilon Molecular Engineeringの登録商標です。

 

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株式会社Epsilon Molecular Engineering 医薬開発事業部 事業開発課

TEL:048-857-8880 E-mail: biz_dev@epsilon-mol.co.jp

 

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