2023.09.15

研究進捗

当社のPharmaLogical®VHHがCAR-Tの抗原認識部位として機能することをin-vitroで確認することに成功しました。

この記事のKeywords:
VHH抗体/スクリーニング/The Month/cDNA Display/パニング/ハイスループットスクリーニング/抗体ライブラリ/CAR-T

背景:CAR-Tとは/EMEのCAR-Tへの取り組み

CAR-Tは近年最も注目されているがん免疫療法の一つです。FDA承認を得る製品も年々増加しており、血液がんを中心として、高い有効性が報告されています。しかし、従来のCAR-Tではサイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群など重篤な副作用などが報告されるなど依然安全性の問題など課題が残っており、CAR-T技術の改良が必要であると考えられています。また、CAR-T技術の改良により、血液がんのみならず固形がんへの応用も期待されております。

現在承認済みのCAR-T製品としては、scFVを抗原認識部位に用いるものが中心となっておりますが、2022年に承認されたCarvyctiは抗原認識部位としてVHH抗体を用いており、VHH抗体ベースのCAR-T製品開発が増加していくことが期待されています。
当社EMEでは、当社がもつ(1)PharmaLogical®Library:ヒト化フレームワークをもち免疫原性が低い人工ヒト化VHHライブラリ(2)cDNA displayを用いたハイスループットスクリーニング技術を用いてここから取得されたPharmaLogical®VHH(VHHクローン)をCAR-Tへ応用できないかと自社研究を進めてまいりました。

結果:EMEの有するPharmaLogical®Libraryから得られたVHHが、CAR-T技術にも展開可能であることが確認されました

当社の持つスクリーニングプラットフォームThe Month”を用いて、①免疫チェックポイント阻害作用するVHHクローン、②特定の固形がん因子に結合するVHHクローンを取得し、これらをCAR-Tへ組み込む研究プロジェクトを実施いたしました(実験①・実験②)。その結果、有用性を示すin vitro評価結果が取得されました。
このin vitro試験では、VHHクローンを用いた実験①、実験②でVHHクローンのヒトT-cell由来細胞表面への提示確認がされ、またT-cellががん細胞を認識した時に分泌するIL-2がヒトT-cell由来細胞から分泌されていることが確認されました。以上の結果から、弊社の有するライブラリから得られたVHHが、CAR-T技術にも展開可能であることが確認されました。

今後の展望

当社がVHH抗体技術で取り組んできた、抗体医薬に加えてCAR-Tについても自社および製薬企業様などとのコラボレーションを一層推進してまいります。また、より高品質なVHHの提供を目指して、VHHライブラリやVHH最適化技術の技術改良を進めてまいります。

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*1 PharmaLogical® Library:従来抗体では認識不可能な抗原結合部位を認識することができるVHHの構造的特性を最大限に反映させ設計された独自のヒト化VHH人工ライブラリー。

*2 cDNA display技術:遺伝子型/表現型対応付けによる目的タンパクの取得を試験管内で行うことができる技術。従来のファージディスプレイを大幅に超える1013-14(10兆~100兆)種類の分子を一度にスクリーニングすることが可能。

*3 VHH抗体(single domain antibody):ラクダ科動物の持つH鎖のみで構成される抗体(一本鎖重鎖抗体)の可変領域(ドメイン)のことで、Variable domain of heavy chain of heavy chain antibodyという。通常の抗体と比較して安定性や修飾性に優れている。

 

PharmaLogical®Libraryのポイント

  • VHH抗体の結晶構造解析データを基にしたデザイン:

抗体フレームワーク部分(FR)に関して既に臨床応用されているヒトFR配列とVHHの結晶構造解析データの結果得られた構造特性を基にデザインしたヒト化VHHライブラリーです。抗原認識部位を形成する3つのCDR(相補性決定領域;Complementarity Determining Region)はアルパカ由来VHHから得られた構造特性の情報を基に設計しており、特に抗原結合に最も寄与することが知られているCDR3を大きくランダム化することで、さらなる多様性を発揮します。

  • 製剤化における不均一性を引き起こすアミノ酸の出現頻度に抑制をかける設計
  • 修飾を受けやすいアミノ酸や、システイン、プロリン残基のような大きな構造変化を引き起こす可能性のあるアミノ酸は製剤化プロセスにおける不均一性を引き起こす原因となります。これらのアミノ酸の出現頻度を抑制するCDRの設計を行うことで、創薬プロセスで生じる課題の最小化が期待できます。
  • 多様なライブラリーサイズ: 1013-14(10兆~100兆)という多様なライブラリーサイズを持ち、EMEのコア技術であるcDNA display技術を基盤としたスクリーニング系により、ライブラリーの多様性を維持したまま革新的なVHH スクリーニングを展開することが可能です。

 

参考論文・WEBサイト

CAR T Cells: Engineering Patients’ Immune Cells to Treat Their Cancers was originally published by the National Cancer Institute.

https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/research/car-t-cells

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