Tsuchiya's Column

第5回コラム

今回のコラムでは、VHHが次世代の筆頭候補となる訳については、説明したいと思います。

 

まず、抗体医薬品の魅力は何でしょうか? 幾つか上げると。①生体高分子であることから医薬品として生体が受け入れ易く、血中半減期が長い。②高い親和性と特異性を有する分子標的薬である。③創薬シナリオが描きやすい。④多くの技術開発と開発実績により、開発ノウハウが蓄積されている。④抗体創薬の魅力を最大化する特徴として、結合部位が2価であることである。つまりそれぞれが異なるエピトープに結合する特徴を有するBi-specific抗体の開発が着目されている。一方欠点としては、大きな分子量とヘテロ4量体という複雑な構造に起因する製造工程・コストや標的へのアクセスにおける課題は残っている。

 

標的分子に対して色々な結合部位に対する幾つもの抗体が取得できる。しかし、臨床応用の目的によって、すべての抗体が有効な訳ではなく、最適の抗体をスクリーニングするプロセスが重要になっている。我々は、これを『Epitope(エピトープ)創薬』と呼んでいる。例として中和活性の場合は理解しやすい。リガンド受容体反応における標的分子の生理機能を抑制するには、標的のどこに結合することが良いのか、直接リガンド受容体の結合部位にで競合阻害する他にも、立体障害やアロステリックな構造変化を誘導することでリガンド受容体の結合阻害を誘導できることも知られている。どのエピトープを選択するかで製品特性が異なってくる。また逆に生理機能を誘導するアゴニスト抗体の創出も可能であるが、アゴニスト活性を誘導できるエピトープの選択には特に時間を要する。VHHは通常の抗体の1/10程度の分子量であり、そのエピトープの特徴も従来の抗体とは異なり、一般に従来の抗体に比べてエピトープの多様性と数は大きい。結果として、VHHは新たなMOAによる医薬品創出の可能性を大きくしてくれる。

もう一点、これからの創薬で注目されるのが、『Paratopic(パラトピック)創薬』である。これは、一つの標的分子に対して複数の部位に結合するものである。従来の抗体では、Bi-specific抗体技術の活用が注目されてきたが、これは別々の標的に対して同時に結合する抗体分子の創出である。一方、VHHは分子量が小さいので同一の標的分子の別々のエピトープに同時に結合する分子を設計することが可能であり、親和性と特性性を増強できるだけでなく、別々の機能ドメインを同時に阻害できるため、機能も向上することが知られている。VHH創薬では複数のVHHを連結することで(多価化と呼ぶ)、従来の抗体よりもより活性の高いVHH抗体の創薬が最も注目を浴びている。

以上述べたように、抗体創薬では、さまざまなエピトープに結合する抗体を取得し、目的の薬効を最大に引き出すエピトープを同定することが成功のカギである。VHHのライブラリーからのスクリーニングでは、如何に多様なVHHを取得し、多価化による分子デザインすることで、これまでにない新しい抗体分子が創出される。EMEは自社技術開発によってこの創薬プロセスを実現した創薬ベンチャーなのです。

 

次回のコラムでは、以下の項目の通り、VHH創薬で何ができるのか紹介します。

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